医療機器該当性の判断を
練習しよう

3.転送や記録したデータの利用目的で該当性が変わる事例

同じようなデータを転送したり、クラウドに保存したりする場合も同様に、その転送・保存されたデータの使われ方によって、医療機器に該当する場合としない場合があります。転送・保存される情報の使用目的が、疾病の診断・治療・予防という医療機器の定義に合致するかどうかが判断のポイントとなります。

クイズ06

バイタルサインをクラウドに転送するプログラム。
医療機器に「該当」するのはどちら?

Aバイタルサインモニタリングプログラム

使用者

医療従事者

製品概要

医療従事者が患者のバイタルサインのモニタリングを行う目的で、医療機器から得られたバイタルサイン(体温、血圧、SpO2等)の情報をクラウドに転送する。医療従事者のスマートフォンのアプリ上では、患者ごとのバイタルサインが表示される。

Bバイタルサイン共有プログラム

使用者

個人/医療従事者

製品概要
  • 個人のスマートフォンに専用のアプリをインストールし、別の医療機器で測定した酸素飽和度、拍動数、歩数、消費カロリーのデータを加工・処理せず、クラウドに保存する。アプリ上では、過去のデータを見たり、経時的な変化をグラフ化して表示できる。
  • このデータを元に、患者に有害な状態が生じている・生じていないことの確認や、疾病の診断は行わない。
  • 必要に応じてデータを主治医にメール送信したり、SNSに送信したりすることもできる。

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A

医療機器該当性の
判断のポイント

A該当

医療現場等で患者のバイタルサインのモニタリングのために用いるものであり、一般的名称「多項目モニタ」(クラスII)に相当するプログラムである。技術的にはデータの転送を行うのみであるが、その情報を単に記録するのみではなく、患者のモニタリングに使用するという点で医療機器に該当する※1

B非該当

個人情報を転送・表示・保管するのみのプログラムである。※2

※1 プログラムの医療機器該当性判断事例について別添, P2-3「1 医療機器に該当するもの 2)医療機器等で得られたデータ(画像を含む)を加工・処理し、診断又は治療に用いるための指標、画像、グラフ等を作成するプログラム ①⑨」参照

※2 プログラムの医療機器該当性判断事例について別添, P7「2 医療機器に該当しないもの A 個人での使用を目的としたプログラム 1)データの加工・処理を行わない(表示、保管、転送のみを行う)プログラム ①」参照

- 解説 -

ここでのモニタリングというのは、患者のバイタルサイン(体温、血圧、SpO2等)の情報を得て、患者に有害な状況が生じている、あるいは生じていないことの確認をすることを意味しています。 どちらのプログラムも個人のバイタルサインをクラウドに転送するものです。
Aは、その情報を用いて医療従事者が患者のモニタリングをすることを意図していることから、疾病の診断・治療を目的とするものとなり、該当となります。特に同様の機能を有する医療機器がクラスIIの一般的名称「多項目モニタ」として存在していることからも該当となります。
Bは、そのデータを用いて、モニタリングや診療などを行うのではなく、単に記録として転送・表示・保管するものであるため、非該当となります。このデータを用いて患者のバイタルサインのモニタリングや診療を行うためのものとする場合は該当となります。
なお、患者に有害な状態が生じていることだけでなく、生じていないことの確認も診断の一種と考えられるので、注意が必要です。また、医療機器から得られたアラームを転送し、医療従事者に知らせる目的のプログラムも、既存の医療機器で同様の機能を有するものがクラスII以上の機器として存在していることから該当になります。アラームを診療情報として単に記録するだけであれば、非該当になります。

クイズ07

画像や映像を遠隔に転送するプログラム。
医療機器に「該当」するのはどれ?

A診断用画像転送プログラム

使用者

医療従事者

製品概要

患者の画像情報(MRI、X線等)を医師(医療機関)から他の専門医(専門医療機関)に転送する画像転送・共有プログラム。転送した画像をもとに、転送先の専門医(専門医療機関)が読影を行う。

B遠隔診療用情報・映像転送プログラム

使用者

医療従事者

製品概要
  • 医療機関内(手術室やICU等)に患者のバイタルモニタや患者の様子をモニタリングするためのカメラが設置されており、その映像を遠隔地にいる医師のPCやスマートフォンに転送・表示することで遠隔診療を可能とするプログラム。
  • ビデオ電話としての利用を想定したオンライン診療システムではなく、診療に必要な情報を転送することを目的としたプログラムである。

C手術教育用プログラム

使用者

医療従事者 (特に若手医師)

製品概要
  • 手術室内に設置されたカメラで撮影された映像を、手術室外のディスプレイに転送する。
  • 若手医師などが、術式の学習のためにその映像を視聴する。
  • 録画が可能で、後から繰り返し視聴したり、早送り・早戻しなども可能。
  • 保護すべき個人情報等は、カメラアングルの工夫により、写り込まないようになっている。

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AB

医療機器該当性の
判断のポイント

A該当

  • 疾病の診断に用いる目的で、画像を転送・共有するプログラムである。※1
  • 診療記録として転送、保管、表示するのみであれば非該当となる。※2

B該当

  • 遠隔診療を行うための手段として、患者のモニタリングや診断に必要な映像を転送・表示することから、医療機器に該当する。※1
  • ビデオ電話としての使用を想定したオンライン診療システムで、例えば問診などを行うことに限定されたサービス(汎用・専用を問わない)であれば非該当となる。
  • 記録・保管目的での転送であれば非該当となる。※2

C非該当

  • 教育の一環として、手術室外のディスプレイ等にビデオ表示をするものであるため、医療機器に該当しない※3
  • 患者のモニタリングや診断に用いるものであれば、該当となる※1

※1 プログラムの医療機器該当性判断事例について別添, P3「1 医療機器に該当するもの 2)医療機器等で得られたデータ(画像を含む)を加工・処理し、診断又は治療に用いるための指標、画像、グラフ等を作成するプログラム ⑨」参照

※2 プログラムの医療機器該当性判断事例について別添, P11「2 医療機器に該当しないもの B 医療関係者が使用することを目的としたプログラム 3)データの保管、転送、表示(表示データを診断、治療、予防に用いることを目的としない場合に限る)のみを行うプログラム ③」参照

※3 プログラムの医療機器該当性判断事例について別添, P9「2 医療機器に該当しないもの B 医療関係者が使用することを目的としたプログラム 1)医療関係者、患者等への医学的判断に使用しない情報提供のみを目的としたプログラム ②」参照

- 解説 -

Aは、患者の画像を他の医療機関に転送するためのプログラムで、他の医療機関の医師が診断を行うための画像の転送であることから、疾病の診断を目的に使用するため、該当となります。
仮に、その画像を診断に活用することがなく、単に診療記録として転送、保管、表示するだけの場合は、疾病の診断を目的にしているとはみなされず、非該当となります。
なお「診療記録」とは、「診療情報の提供等に関する指針」(平成15年9月12日付 医政発第0912001号「診療情報の提供等に関する指針の策定について」の別添、令和5年1月25日付 医政発0125第7号一部改正)では、診療録、処方せん、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、紹介状、退院した患者に係る入院期間中の診療経過の要約その他の診療の過程で患者の身体状況、病状、治療等について作成、記録又は保存された書類、画像等の記録となっています。

Bは、Aと同様に遠隔での患者のモニタリングや診療を目的としていることから、該当となります。こちらも仮に診断を目的とせずに、単に診療記録として転送、保管、表示するだけの場合は非該当となります。

Cは、AとBの事例とは逆に、遠隔診療や診断を目的とせずに、医学教育の目的で映像を転送、保管、表示するだけであることから、非該当となります。

クイズ08

介護記録の活用を目的としたプログラム。
医療機器に「該当」するのはどちら?

A介護記録分析用プログラム

使用者

介護従事者

製品概要

介護記録の記載事項をチェックし、独自のアルゴリズムに基づいて、食事の際の誤嚥や、歩行の際の転倒のリスクを評価する。その結果に基づいて、患者に個別最適化された嚥下訓練や歩行訓練のメニューも表示する。

B介護記録分析用プログラム

使用者

介護従事者

製品概要

介護記録の記載事項をチェックし、あらかじめ設定された特定のキーワードが介護記録の文面に出現した際に、注意喚起の目的で、そのキーワードが出現していることのみを介護従事者等に対してメッセージで表示する。そして、そのキーワードに関連した一般的な情報を通知する。

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A

医療機器該当性の
判断のポイント

A該当

  • 対象は介護ではあるが、独自のアルゴリズムに基づいた、嚥下機能・歩行機能の評価・リスク判定を行うものである。また、患者ごとに最適化された訓練メニューを提示するものである※1

B非該当

  • 介護支援の目的で、あらかじめ設定されたキーワードを文書上で検索するのみの業務支援に相当するプログラムである。※2
  • また一般的な情報を提供するのみのプログラムである。※3

※1 プログラムの医療機器該当性判断事例について別添, P1「1 医療機器に該当するもの 1)入力情報を基に、疾病候補、疾病リスクを表示するプログラム ⑤」参照、P4-5「1 医療機器に該当するもの 3)治療計画・方法の決定を支援するためのプログラム(シミュレーションを含む)⑬」参照、P5-6 「1 医療機器に該当するもの 5)疾病の治療・予防等のために、患者又は健康な人が使用するプログラム(行動変容を伴うプログラムなど)④」参照

※2 プログラムの医療機器該当性判断事例について別添, P7「2 医療機器に該当しないもの A 個人での使用を目的としたプログラム 1)データの加工・処理を行わない(表示、保管、転送のみを行う)プログラム ①」参照

※3 プログラムの医療機器該当性判断事例について別添, P10「2 医療機器に該当しないもの B 医療関係者が使用することを目的としたプログラム 2)院内業務支援、メンテナンス用プログラム ア 医療関係者が患者の健康記録等を閲覧等するプログラム ③」参照

- 解説 -

介護現場で使用するプログラムも考えられます。病院やクリニックで使用するものではないからと言って、医療機器にならないわけではありません。
ここでもやはり、出力される情報の使用目的が、疾病の診断・治療・予防という医療機器の定義に合致するかどうか、その出力のアルゴリズムが既に広く知られている公知の情報に基づくものか、独自に開発したものか、というのが判断のポイントとなります。
Aは、介護記録から独自のアルゴリズムで、個別の患者の嚥下訓練や歩行訓練といった治療のための計画を支援するものであることから該当となります。
Bは、介護記録の中に特定のキーワードが出現するかどうかだけをチェックするものであり、業務支援の範囲であると考えられます。また提供される情報も、一般的な情報であることから非該当となります。逆に、前者と同様に、介護記録のキーワードから個別の患者に最適化された治療計画などを目的とした場合には該当となります。

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