医療機器該当性の判断を
練習しよう

2.プログラムの出力内容によって該当性が変わる事例

同じようなデータを入力したり、使い方をしたりしても、プログラムが出力する情報の内容によって、医療機器に該当する場合としない場合があります。出力される情報の使用目的が、疾病の診断・治療・予防という医療機器の定義に合致するかどうか、その出力のアルゴリズムが既に広く知られている公知の情報に基づくものか、独自に開発したものか、といった判断のポイントがあります。
ここでの「公知の情報」とは、日本国内において、医学薬学栄養学上、科学的な根拠が十分あるものとして一般的に認知されている情報を指し、特許のように単に公表されているだけでは公知とはみなされません。「公知の情報」の具体例についてはこちら

クイズ02

頭痛に使用するプログラム。
医療機器に「該当」するのはどちら?

A頭痛診断プログラム

使用者

個人

製品概要

入力フォームにしたがって頭痛の症状などを入力すると頭痛のうち関連する頭痛の種類(病名)を表示するプログラム。
頭痛の種類については独自のアルゴリズムにより予測している。

B頭痛症状記録プログラム

使用者

個人

製品概要

入力フォームにしたがって頭痛の症状などを入力することで、頭痛を感じる頻度や時間帯などを記録し、後から振り返ったり、医師に相談する際の参考情報とするプログラム。頭痛の診断(診断の補助を含む)は行わない。

正解はこちら

A

医療機器該当性の
判断のポイント

A該当

  • 入力された情報を医学上公知ではない独自のアルゴリズムを用いて解析し、頭痛の診断に使用されるプログラム※1

B非該当

  • 頭痛の症状を記録するのみのプログラム※2
  • 診断に資する情報などは提示しない

※1 プログラムの医療機器該当性判断事例について別添, P1「1 医療機器に該当するもの 1)入力情報を基に、疾病候補、疾病リスクを表示するプログラム ②」参照

※2 プログラムの医療機器該当性判断事例について別添, P7「2 医療機器に該当しないもの A 個人での使用を目的としたプログラム 1)データの加工・処理を行わない(表示、保管、転送のみを行う)プログラム ②」参照

- 解説 -

どちらのプログラムも、入力フォームにしたがって「頭痛の症状など」を入力するものですが、

  • Aは、入力情報を元に頭痛の種類(病名)を表示するものであり、医学上公知ではない独自のアルゴリズムを用いて疾病の診断をすることを使用目的としています。そのため該当と判断されます。
  • Bは、自身の感じた頭痛の症状を感じたということを電子的に記録するのみであり、診断やその補助としての使用は目的とされていません。また診断に使用される情報などは提示されません。そのため非該当となります。

クイズ03

リハビリテーションや運動を支援するプログラム。
医療機器に「非該当」になるのはどれ?

Aリハビリテーション治療提案プログラム

使用者

患者

製品概要
  • 疾病患者がリハビリテーションしたい部位・動きなどを選ぶことで、患者の目的に合ったリハビリテーション内容を表示し、運動補助を行うプログラム。
  • さらなる疾病の予防や重症化の予防、現在の疾病の治療を目的とする。
  • これまで理学療法士や作業療法士等の提案、指導により実施していたリハビリの一部を代替するものであり、医師の指導のもと、自宅で使用する。

Bリハビリテーション支援プログラム

使用者

患者

製品概要

リハビリテーションの動画配信や、疾患について一般的な範囲の情報提供または実践内容の記録を行うプログラム。

C運動支援プログラム

使用者

患者

製品概要

疾病患者が治療の一環として、体力低下予防や筋力低下予防を目的として運動を行うときに、体重などの各種バイタルサインの基準値からの変動が、運動を中止すべきレベルに達したら警告を表示するプログラム。
基準となる値は、公知のガイドラインまたは医師の指示により設定する。バイタルサインは患者本人が測定して入力する。

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BC

医療機器該当性の
判断のポイント

A該当

  • 疾病の回復を目的として、患者情報から患者個々人の目的に合致するリハビリテーション内容を提案する。
  • 個別の患者に適したリハビリテーションの内容の提案・指導を行っている。※1
  • 2次・3次予防や疾病の治療を目的とした効果を標榜する。
  • 疾病患者に不適切な運動を行わせる可能性等の安全上のリスクがある。また、薬機法の規制を受けずに流通すると、本プログラムのみに依拠して医師の診察を受けないことにより、治療の機会を失うリスクがある。

B非該当

  • 患者に個別化されたリハビリテーションの提案は行わず、一般的な範囲の情報提供、記録機能のみを有する。※2

C非該当

  • 患者に医学的に必要な運動支援を行うものではあるが、公知のガイドライン又は医師の指示により設定した基準に基づいた判断を行うものであり、患者に個別化された基準値などの提案を行うものではない。※3

※1 プログラムの医療機器該当性判断事例について別添, P4「1 医療機器に該当するもの 3)治療計画・方法の決定を支援するためのプログラム(シミュレーションを含む)⑫」参照、P5-6 「1 医療機器に該当するもの 5)疾病の治療・予防等のために、患者又は健康な人が使用するプログラム(行動変容を伴うプログラムなど)④」参照

※2 プログラムの医療機器該当性判断事例について別添, P9「2 医療機器に該当しないもの B 医療関係者が使用することを目的としたプログラム 1)医療関係者、患者等への医学的判断に使用しない情報提供のみを目的としたプログラム ③」参照

※3 プログラムの医療機器該当性判断事例について別添, P7「2 医療機器に該当しないもの A 個人での使用を目的としたプログラム 2)運動管理等の医療・健康以外を目的としたプログラム ②」参照

- 解説 -

  • Aは、疾病の治療や予防を目的として、個別の患者に適したリハビリテーションの内容の提案・指導を行っているものであり、治療計画・方法の決定を支援することから該当となります。
  • Bは、一般的なリハビリテーションの動作を映像として見せるものであり、患者個別の治療方法の決定などには寄与しないことから非該当となります。
  • Cは、患者ごとに設定された値に対して警告を表示するものであることから、一見すると該当するようにも思えますが、その基準となる値は公知のガイドラインに基づくものであったり、医師が事前に設定したりしたものであることから、単に基準値に達したかどうかのみを知らせるものであるため、非該当となります。

クイズ04

個人の状態を分析して活用するプログラム。
医療機器に「該当」するのはどちら?

A熱中症診断支援プログラム

使用者

個人

製品概要
  • 屋外で作業をする従業員などを対象に、熱中症の兆候を検知することを目的としたプログラム。
  • 利用者自らが感じた疲労感や精神状態、飲水量、睡眠時間を記録した情報を元に独自のアルゴリズムで利用者に熱中症の兆候が見られるかを分析する。
  • 分析結果に応じて、その時点での熱中症の度合いを判断し、受診勧奨を行う。

B疲労度測定プログラム

使用者

個人

製品概要

使用者に疲労度を意識させるとともに、疲れの度合いにより、適切なタイミングでの休息を促すことを目的としたプログラム。利用者自らが感じた疲労感や精神状態、睡眠時間を記録した情報を元に独自のアルゴリズムで利用者の疲労度を分析する。使用例として、運転前に計測し早めの休息を促すことが想定される。

正解はこちら

A

医療機器該当性の
判断のポイント

A該当

熱中症は疾病の1つと考えられ、その兆候の検知を目的としていること、熱中症の度合いを判断していることから、該当と判断される。※1

B非該当

疲労度の分析は、疾病の診断・治療・予防を目的とすることには該当しない。利用者に適切なタイミングでの休息を促すことを目的に、疲労感等の情報を記録させたり、疲労度等を測定、表示したりするものである。※2

※1 プログラムの医療機器該当性判断事例について別添, P7-8「2 医療機器に該当しないもの A 個人での使用を目的としたプログラム 2)運動管理等の医療・健康以外を目的としたプログラム ①のなお以降、⑤のカッコ内の記載」参照

※2 プログラムの医療機器該当性判断事例について別添, P7「2 医療機器に該当しないもの A 個人での使用を目的としたプログラム 2)運動管理等の医療・健康以外を目的としたプログラム ①」参照

- 解説 -

熱中症は疾病の1つと考えられ、その兆候の検知を目的としていること、熱中症の度合いを判断していることは、一種の診断をしていると考えられます。そのため該当と判断されます。
一方で、疲労度の分析は、薬機法の医療機器の定義にある疾病の診断・治療・予防には該当しないことから、非該当と判断されます。ただし、その分析結果を元に、例えば熱中症のような特定の疾患の兆候の検出をしたり、その度合の判断をしたりすることは医療機器に該当すると判断されることになります。

クイズ05

組織切片を評価するプログラム。
医療機器に「非該当」になるのはどちら?

A組織切片評価プログラム

使用者

医療従事者

製品概要

組織切片を一定の力で引っ張ることで引き裂いた際の画像から、組織検体の硬さ(裂け目の形状の違い)を定量化して表示するプログラム。独自に構築したデータベースとアルゴリズムにより検体ががんか否かを判定する機能も備えている。

B組織切片評価プログラム

使用者

医療従事者

製品概要

組織切片を一定の力で引っ張ることで引き裂いた際の画像から、組織検体の硬さ(裂け目の形状の違い)を定量化して表示するプログラム。組織の硬さの情報や他の情報から、医師が検体ががんか否かを判定する。

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B

医療機器該当性の
判断のポイント

A該当

組織切片の硬さの定量評価の結果を用いて、がんを検出したり、そのがんの悪性度の鑑別を行う(診断支援も含む)プログラムはクラスII以上の医療機器に該当する。※1

B非該当

組織切片の硬さなどの物理的特性を定量評価したり、計測したりするまでであり、プログラム自体ががんか否か判定しないのであれば、クラスI医療機器相当のプログラムである。※2

※1 プログラムの医療機器該当性判断事例について別添, P1「1 医療機器に該当するもの 1)入力情報を基に、疾病候補、疾病リスクを表示するプログラム ④」参照

※2 プログラムの医療機器該当性判断事例について別添, P14「2 医療機器に該当しないもの C 一般医療機器(クラスⅠ医療機器)と同等の処理を行うプログラム ⑭」参照

- 解説 -

この2つの事例について、組織切片を引き裂いたときの裂け目の形状から組織検体の硬さを定量化するところまでは同じです。
Aは、その組織ががんであるかどうかの判断や、そのがんの悪性度の鑑別診断を行うことや、その支援をすることまでを目的としているのに対して、Bは硬さという組織の物理的な特性を、画像を元に定量化するのみです。
Aは診断に寄与する情報を提供することから該当、Bは単なる計測装置であることからクラスI相当のプログラムとなり、医療機器非該当となります。ハードウェアの医療機器でも、検体の大きさや長さといった物理量を測ったり、個数を数えたりするようなものは、クラスIの医療機器となるものがほとんどです。

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